いわゆる「京都大学時代」、貧乏学生の六分儀ゲンドウと、裕福な家庭に生まれた美しい碇ユイというカップルの、不器用な不器用な恋愛を描
いた短編連作です。一応設定らしきものはあって、この世界では「セカンド・インパクト」は起きません。というか、SF的なことはいっさいあり
ません。あくまで現実の京都を舞台にしたごく普通のラブストーリーです。
FFは数あれど、この時代のこのキャラクターを取り上げてるのって、ほかにあるんでしょうか?
発表当時、「錬金術師ゲンドウよりも好きだ」という感想をくれた人がいました。執筆時間合計1時間に満たない小品とあの大長編を比較される
なんて思ってもみませんでしたが、そういわれれば「ファンフィクションを書く気持ち」としては、こちらのほうが純粋に楽しんで書けたという点
は確かにあります。
短編集名の「STRAY SHEEP」とは迷える羊のこと。夏目漱石の名作「三四郎」の有名なせりふからとりました。96年年末頃執筆。
連作の記念すべき第1作目。数年前、あることがあって落ち込んでいるときに、気を晴らすために、ノートパソコンに向かったら、まるで歌う
ように5分足らずで書けてしまいました。久しぶりに読んだら、なんかこのユイは萌えます。
「老いらくの恋」という言葉があります。実際、このFFの冬月教授はつらいでしょうね。もちろん本編の冬月も同じ感情をユイに対して抱い
ていたと、私は確信しています。題名はポリスのヒット曲「高校教師」から。
いや、特に何かが起きるような話じゃないんだが、これも好きだ。
若い頃の碇ユイと、こんな風に高級ホテルでだらだらすごしたい。すごせたらいいな、という願望充足的FF。
題名は別にウェブサイトの新着情報コーナーではなく、「最近どうしてる?」といった感じの挨拶の意。ジャズシンガー、ヘレン・メリルの名
演で有名。これでこの連作は終わり。
97年、「練ゲン」を書き上げたあと、居酒屋豊泰創作部屋で、親しいFF作家さんから「あなたの書いたシゲル×マヤの『星の降るようなラブ
ストーリー』が読みたい」とリクエストを受けました。当時、私はもうほとんどエヴァ本編への興味を失っていました。本編を利用してシゲル×マ
ヤなんてぜんぜん思いつかなかったし、書く気持ちが起きませんでした。ですが、この人のリクエストにはぜひ応えたかった。なので、キャラの名
前と声と外見のイメージだけ利用させてもらって、私の「アメリカン・グラフィティ」を書こうと思いました。
このFFのキャラたちつまりオペレーターズは、私の偏見で、エヴァとは何の関係もない田舎の青年に生まれ変わってしまいました。
私は2時間ほどで一本目の「ソング・フォー・ユー」を書き上げ、その人の発言のレスにしました。すると、1日たらずでその人は感想と私とは全
く違うシチュエーションのFFを私のFFの後ろにくっつけてくれました。私は喜んでその人のFFに2本目のFFを感想とともにくっつけまし
た。この調子で交互にFFを交換しあうという、まるで「ギターバトル」のような感じでこの連作は生まれました。
ですから、これは「ノリ」だけで書いたFFです。それぞれ構想1日以内、執筆2~4時間で書いたかな。
でも、私はこの連作短編のストーリーが自分書いた全部のストーリーの中で一番好きです。
TV本編1クール終了前後だったか、「最終回以降シンジはだれと結ばれるか?」という話題がでるたびに、綾波原理主義者たちはレイの出自の
関係で結ばれないのではないかと不安を抱いていました。つまり、どうも碇ユイとレイは(DNA的に)関係ありそうだ、ユイといえばシンジの実
母ではないか。シンジと結ばれると言うことは近親相姦ではないか、と言う感じですね。
で、このFFはレイがユイのクローンそのものであり、なおかつシンジと結婚した世界を、冷静に書いたものです。
上記の聖母子像の続編です。よく「アルジャーノンに花束を」の手法と言われましたが、自分としては「あしながおじさん」の手法を模したつも
りでした。
これは、アニメ本編の設定をほぼそのまま使用したFFの最後の作品になりました。ファンフィクションとしての虚構というか設定の改変は、
「エヴァ零
号機稼働実験直前に、あろうことか碇指令が綾波レイと南半球へ出奔したら」という仮定です。もちろん、あの「ナボコフの本」における二人の逃
避行をなぞっ
ているつもりです。「ナボコフの本」とはロックグループ「ポリス」のヒット曲の歌詞の一節です。あの曲にもこのFFの元になった書名そのもの
は出てきませ
んでした。ウラジミール・ナボコフでググってみてください。きっとどの本だかすぐにわかりますよ。その趣味があろうと無かろうと、息が止まる
ほど美しい小 説です。ぜひ一読をおすすめします。
TV終了後、一本目の映画公開前、「錬金術師ゲンドウ」の最終話執筆中に、息抜きのつもりで書きました。
むかし、95年だったか、ニフティのエヴァ創作フォーラムで「創作講座」みたいなツリー(スレッド)があって、そこでFF作家さんたちが創
作上の質問をするという企画があったんです。そのとき、私は、こんな意味の質問をしました。
「私は綾波原理主義者の加地といいまして、どっちかというとシリアス物がおおいんですが、今度シンジ×レイのラブコメディを初めて書きたいん
です。ですがその際TV本編のレイの性格を改変せずに書きたいのですが、何かいいシチュエーションありませんか?」
えー、これはマジな質問でした。私はそれまで「ラブ米」を書いたことがありませんでした。
「ラブ米」となると綾波をある程度能動的に動かさないといけない、でも性格改変せずにそれができるか?という難関がありました。
で、ある人(当時ラブ米の名手と言われていた人)があるヒントをくれました。そのヒントを元に、そのヒントを具体化できそうなTV本編のある
エピソードを選び、それをほんのすこし強調して話を組み立てました。そういう意味では、私にしては珍しい王道的SS(サイドストーリー)とい
えるかな、と思います。
ちなみに最初の題名は「ラブラブ1号」でした(笑)。
でもTV本編からはほかにいいアイデアを思いつかなくて2号以降は書けませんでした。
実質的なFFデビュー作です。94年年末、私は初めて20行以上のSS(サイドストーリー)を書いたのでした。ちょうどTV放送の1クール
目が終わるときでした。その当時、SSといえば9割以上がアスカ×シンジのラブコメだったような気がします。アスカの登場で本編がいくらか明
るい感じだったのもそうでしょうが、やっぱりアスカという登場人物は動かしやすかったんだと思います。
私も最初のテーマにはあたりまえのように、アスカとシンジを絡ませたストーリーを考えました。今読み返してみると「ラブコメ」と言ってもいい
ような感じですね。「アダムとイブと」の解説文を訂正します。これがラブコメ1作目で、「アダムとイブと」が2作目です。
「」内に元ネタの映画名が入っていますが、もちろんその映画のシチュエーションをまんまいただいてますね。
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