謎めいた、というか謎のまま放り出したテレビ版最終回をふまえて、「新世紀エヴァンゲリオン」の真実を描こうと思って書き始めたもので す。結局、まったく作者の好みの世界 観に走った作品になりましたが、非情に楽しかったです。自画自賛になりますけど、四部作の最後にでっち上げた「理論」は非情に気に入って います。ほとんど思いつくままに四作を書いてしまったのですが、古今の「詩」(詩文ないし詩の題名)が四作を貫くモチーフになっていま す。
4
部作すべて通底するのは設定以外に、「詩」の引用です。
The
Tyger! ブレイクの「虎よ!虎よ!」(英詩)
星
の海、漕ぎわたるとき 紀貫之の和歌
PARADISE
LOST ミルトンの長編詩(英詩)
天
つ空なる人を恋ふ 詠み人知らずの和歌(古今和歌集)
と
いうことで、英詩→和歌→英詩→和歌と同じ詩でも交互に英詩と和歌がモチーフになるようになっています。
ベ
スターの名作の由来となったブレイクの詩から題名を取りました。題名の綴りも伏線になっています。狙いとしてはディックの「流れよ我
が涙~」みたいな小説にしたかったということですか。この小説のラストは大好きです。ほとんど感想をもらえなかったかわいそうなFF
です(笑)。
ゲ
ヒルンからネルフ発足までの間の話です。■
こ
の題名と引用している和歌は、「土佐日記」からですね。この和歌から連想する世界が、ちょうど宇宙旅行を連想させました。
あ
あ、いうまでもなく「2001年」です(笑)。いいじゃないですか、好きなんだし(笑)。
2027
年という設定です。シンジとアスカは結婚しています。■
原
文を引用してみました。よく引用されたり、モチーフにされたりこのように題名だけいただかれたりするミルトンの長編詩ですが、未読の
人はぜひ読んでみることをおすすめします。確かに古典として残るだけのことはある名作です。
こ
の4部作は時間順ではなく、セカンドインパクトの瞬間に戻ります。■
題
名は古今和歌集の詠み人知らずの名作から。注釈なんかは「身分違いの恋に悩む女官が詠んだのでは」と書かれていることが多いですね。
こ
の小説では全ての男性に存在する「永遠の少女」への憧憬を「天つ空なるひと」にこめたつもりです。
主
人公はシンジとアスカの息子、ユウキ。
さ
て、いくつかの補足説明を。
作
中の「空間接合」については、手元に資料が無いのですが、ある科学エッセイから着想を得ました。接合状態を光速で加速し、結果として
タイムトリップを可能とするというアイデアもこのエッセイから得ています。ただ任意の時期に、まるで「ブックマーク」のようにこの接
合状態を「投げて」おき、神の無誤謬を担保するというのはオリジナル。
使
徒を虚空から出現させるときに利用する「架空の粒子」、「形体形成子」についてはオリジナルのアイデアです。とうぜん生命が進化戦略
として形態情報を交換しあうというのもオリジナルです。
ま
た形而上の生物(使徒のような)を形而下に出現させるメカニズム(「ヒエロファニー」と呼んでいます)も独自の設定です。
ハー
ドSF風味ですが、作者として一番いいたかったのは・・・いやそれは読んでみてください。ニフティで発表したとき、その一番書きた
かった部分をほめてくれた人がいてうれしかったのをおぼています。■
読
み返すと、執筆当時はまっていた「ライアル・ワトソン」の影響が感じられてほほえましい感じがしました。すっかりメッキが剥がれてし
まった感がありますね。「生命潮流」なんか夢中になって読んでいたなあ(苦笑)。あと最近では「ホーキング放射」にかんしてホーキン
グ博士が自説を撤回するといった報道がありました。この小説はなんだかどんどん古びていくような気がします。
もともとエヴァのEOE以前に書かれたFFなので、EOE以降は価値が無くなったと思っていました。なので、全部を公開するのは控え
ていました。でも、再読したら結構おもしろかったです(笑)。自分としてはそれなりに楽しめました。
エヴァのFFとしては「ちょっと違う」かもしれませんが、未読の人はぜひ読んでみてください。「ハードSF風味のファンタジー」とし
て楽しんでいただけると幸いです。