錬金術師ゲンドウ

 第3話「台風がやってきた!(前編)」

 碇ゲンドウは錬金術師である。彼は久しぶりにその本業である金作りにいそ
しんでいた。
 彼の仕事場は自宅である木造2階建ての一階の座敷を改造した実験室だっ
た。畳が外されているのはもちろんのこと、部屋の中央にデンと据え付けられ
た「反応炉」の部分は床さえも取り除かれ、特別に補強したコンクリートの基
礎がむき出しになっている。ついでだから、部屋の他のようすも描写しておこ
う。もと座敷だったから、当然床の間があり、妻のユイの父が存命のころには
そこには山水画がかけられていたのだけど、いまは『セフィロトの木』の掛け
軸がかけられている。神棚のあったところには、昔ながらの氏神の代わりに、
錬金術師の神である『ヘルメス・トリスメギストス』の、ご神体がわりの絵が
置かれている。
 金作りの前に、ゲンドウはいつもこの神棚に向かっておざなりに祈るのだ。
「ヘルメス、メルクリウス、トート。われに力を与えたまえ…」

 ゲンドウは「反応炉」の鉛入りガラスの丸い窓から、たったいま変換された
ばかりの小指大の金の固まりを見つめている。変換の瞬間は、組み替えられる
粒子の間からはじき出される光子、つまりガンマ線放射による危険があるので、
直接見ることは出来ない。
 ゲンドウは汗をかいていた。金作りはえらく骨の折れる仕事だ、ゲンドウは
思った。
 薬剤師になればよかった。ゲンドウは思った。薬剤師は立派な仕事だ。名刺
を出したときの相手の反応が違う。『ほう…錬金術師ですか』、ちくしょう、
胡散臭い目で人をみやがって。おれは薬学部に進みたかったのに、あの欲の皮
のつっぱった、くそ親父のせいで。

 ゲンドウは彼の父、つまりシンジの祖父にあたる人物の顔を思い浮かべた。
ゲンドウが高校3年の時、一時的に金の生産量が下がり、結果金の価格が上が
ったのがゲンドウの運のつきだった。彼の父は勝手に息子の大学の願書を書き
換え、無理矢理ゲンドウを魔法学部錬金術科に入れてしまったのだ。魔法学部
の中でも錬金術科は人気薄で、誰でも入れるといってよかったので、ゲンドウ
は難なく合格したが、何度学部替えを申請しようとしたことか。彼がそれを思
いとどまったのは、同じ魔法学部で魔女学科のカノジョが出来たからだった。
それがユイだった。ユイとは魔法学部の一般教養科目の『グノーシス哲学 1』
で一緒になったのだ。

「ただいま」実験室に息子のシンジが入ってくる。
 シンジの日課は、中学が終わるとすぐに家に帰り、二階の自分の部屋にあが
る。そして体調15センチのホムンクルスにして、彼の大切な友達であるレイ
に声をかけて服を着替え、一階にある実験室に降りてゆく。そして夕食まで父
の手伝いをするのだった。
 べつに親孝行でやってるつもりはなかった。自分が将来何になるのか皆目け
んとうもつかないし、夢もない。なんとなく父の跡を継いで『錬金術師』にな
るんだろうな、と漠然と思っていた。
けれど、最近目標らしきものが出来た。それは錬金術師になり、生活に困ら
ない程度の金を作りながらホムンクルスの研究をして、レイを普通の女の子に
することだった。
 …そのころぼくはオトナになってるだろう。ぼくはレイに結婚を申し込もう。
レイのウェディングドレス、きれいだろうな。ぼくはレイをそっと引き寄せて、
あつい抱擁を…。
「なに窒素ボンベに抱きついておる?…気色の悪い。そのフラスコをとってく
れ」
「…あ、う、うん。これ?」
「そうだ」
「いまは何をやってるの?」
「エリクサー(不老不死の薬)の研究をしておる」ゲンドウは重々しく言った。
「すごいや、とうさん、そんなものを作ってるの?」
「いや、エリクサーは『絶対に』出来ない。そいつは15年も前に錬金術師学
会で証明されておる」
「…?…じゃ、なんで研究してるの?」
「研究したことにしとかんと、化学薬品購入代が必要経費で落ちんだろうが、
バカモノ」

 庭では碇ユイが『シゲル君』に洗濯物を取り入れさせていた。『シゲル君』
とは2個の大きなスーツケースと一緒に送られてきた荷物運び用の人造人間
で、碇家の庭に住んでいるのだった。秋なのに、夏のように暑い日で、『シゲ
ル君』は腕まくりしている。
「たくましい腕ね」ユイは『シゲル君』のつぎはぎだらけの腕をそっとなでる。
『シゲル君』はあたりをきょろきょろと見渡して、ひとけのないことを確認す
ると、ありがとうございます、マダム、と言ってにやりと笑った。頬の縫い目
がほころびそうになる。

 夜になって風が出てきた。季節はずれの台風が近づいてきているのだった。
シンジはパジャマに着替えると、窓際にレイが入っているガラス瓶を入れ、
おやすみのあいさつをした。シンジは人差し指でガラス瓶をそっとさわる。レ
イは、その指に、おずおずとキスをした。
 そしてシンジはベッドに入り、その指をそっと口にあてるのだった。
「おやすみ、レイ」

 次の日は金曜日。シンジはいつものように中学校に行き、ゲンドウは実験室
に閉じこもり、ユイは薬を作っていた。
ピンポーン。チャイムが鳴る。
「あなた、出てくださいな」奥でユイの声がする。
「はいはい」ゲンドウは玄関へ行く。
 背広服姿の中年男が二人、立っていた。電気温水器か何かのセールスマンだ
ろうと思い、ゲンドウはしかめっ面をしてみせる。けれどあんまり普段の表情
と変わったようには見えない。
「…あの、こちらに『上級魔女』がいらっしゃると訊いたのですが?」一人の
中年男が名刺を差し出しながら言う。『○○県体育協会 体育振興課課長 服
部センノスケ』?魔女の運動会でもあるんだろうか、とゲンドウは思った。
どちらにしろユイの客だ。おーい、かあさん。ゲンドウはユイを呼ぶ。

「…ですから、メールでお知らせしたように明後日の日曜日に県民体育祭を開
催するんですが、ちょうど台風の接近が予想されておりまして、あなたに台風
のコースを、そのあの、『魔法』でですね、なんとかしていただきたいと」
「ち、ちょっとまってください。その『メール』って何のことですか?」ユイ
は言った。
「…は?…あのなんていうんですか、その『インターネット』のホームページ
で、『ここにメールしてねっ』とあったので」
「ホームページ?…ちょっとそのURL控えてます?」
「はあ」といって服部は背広からメモ帳を取り出してユイに見せる。
「ここに、この家の住所が書いてあったもので…。あの、ひょっとして行き違
いかなんかですか?どーしても今度の日曜日でないと困るんです!県立陸上
競技場のコケラ落とし間に合わせないと、わたしの、わたしの立場が」服部は
目に涙を浮かべている。
「まってください」ユイはそういうと、自分の書斎に使っている四畳半の和室
のパソコンの電源を入れる。
「なんとかひとつその」服部は追いかける。ゲンドウも服部の連れの男も後に
続く。
「ですから、まってください」ユイはブラウザを立ち上げ、そのURLを打ち
込んだ。ほんの一分ほどでそのページが表示される。
「こいつ、なんて図々しい」ゲンドウは背後から言った。たしかに住所はここ
になっている。『上級魔女 よろず相談ひきうけます。恋の悩みから明日のお
天気だってダイジョーブ!オフィスはここよ(ハアト)』…人の家を「オフィス」
呼ばわりしくさって。ゲンドウは思った。
「…すごい。この子、昇格したんだわ。…天才なんてもんじゃない!」ユイは
ページの中にでかいフォントで、誇らしげに掲げられている『魔女ID』をマ
ウスでコピーする。そしてブックマークを使って別のページにジャンプした。
「www.wwww.…って。Wが多すぎるんじゃないか」パソコン半可通のゲンド
ウは偉そうに言う。
「ばかね。あとのWは、『ワールドワイド・ウィッチズ・ウェブ』よ」ユイは
うるさそうに言う。ユイは世界的な魔女ネットワークの検索ページを開いたの
だ。まるでYahooみたいな画面が出てくると、さっきの『魔女ID』をペース
トし、SUBMITというボタンをクリックした。
 しばらくすると顔写真入りの、若いというより幼い魔女のプロフィールが出
てくる。
「…この子ですか!?…まだ子供じゃ」服部は口を滑らせた。
「ええ、まだ14歳です。でも、この子は10年に一度、いいえ50年に一度
出るかでないかっていうくらいの『天才』です。…気象魔法ぐらい、なんなく
出来るでしょう。…あら、『ウィズ・ローレンツ賞受賞』ですって!」ユイは
やけに興奮している。
「『ウィズ・ローレンツ』って、あのキール・ローレンツのことかい?」ゲン
ドウは言う。
「そうよ、すごいわ。確かまだ世界でも50人に満たないはず」
「…そのローレンツってなんですか?」服部はおそるおそる訊ねた。
「一般の人にはあまり馴染みがないでしょうけど、世界でたった6人だけ定冠
詞なしの『ウィザード』という称号を持つ魔法使いがいます」
「5人だ。台湾のワン仙人は、こないだ桃源郷にいってしまった」ゲンドウは
一本取ったぞといいたげに得意そうに言う。
「彼らの魔力は上級魔女よりもはるかに上です。彼らのいくつかの魔法は地球
上での使用を禁止されているぐらいなんです」ユイはゲンドウを無視して、二
人の客に説明する。「彼らは特定の国の国籍を持つことが許されていません。
兵器として利用されるのをふせぐために。『ウィズ』ローレンツはヨーロッパ
地域の魔法アカデミーの長もしてて、優秀な魔女に賞を与えるんです。『ウィ
ズ・ローレンツ賞』がそれ」
「…じゃ、その子はすごいんですね…」服部は言う。
「ええ、わたしなんかよりもね。はるかに年下だけど、格上ですよ」ユイは言
う。

「あの子は今日の夕方の便で来日するんです。あした来てくださいますか?…
もちろん気象庁の許可はとってますね」ユイは玄関先で客を見送りながら言う
のだった。
「ええ、それは抜かりなく。関係省庁の許可は昨日のうちにかけずり回って」
では、といって服部たちは去った。
「…おれは気にいらんな」ゲンドウはぽつりと言った。
「さて、今日の晩御飯はなんにしようかしら?あんがい、お味噌汁とご飯なん
か喜ぶかしら」ユイはゲンドウの言葉が聞こえなかったふりをして台所に去っ
た。

 シンジが帰ってくると、両親が出かけるところだった。
「ねえ、シンジ、かあさんたち、ちょっと成田空港に行って来るわ」ユイは言
うのだった。
「え?空港に?だれかお見送りにいくの?」
「迎えに行くのだ」ゲンドウは『シゲル君』と一緒に庭の方からやってくる。
「…誰を?」シンジはなぜかいやな予感がした。理由はまったくなかったが。
「せ、説明は帰ってきてからするわ。とにかく留守番お願いね」ユイはなぜか
あわてながら、碇家のマイカーである、古ぼけた緑色のローバー114のハン
ドルを握る。ゲンドウは助手席に、『シゲル君』は後部座席に丸まって乗った。
「なんで『シゲル君』まで連れていくのさ?」
「荷物があったら運ばせるためだ。バカモノ」
 車は走り去る。

「…なんだよ、いったい」シンジは呟きながら靴を脱ぎ、二階の子ども部屋に
上がった。
 彼は何よりも先に、留守中は勉強机の上に置いてあるごく淡いオレンジ色の
液体が入ったガラス瓶をのぞきこむ。
 ガラス瓶の中に、小さな小さな少女が浮いていた。赤い瞳をくりくりさせな
がら、シンジを見上げて手を振っている。
「やあ、レイ。帰ってきたよ」シンジは言う。レイに、自分の言葉の意味が通
じているのかは、わからなかった。けれど、レイはシンジの表情や声の調子に
敏感に反応するのだ。何かいいことがあってシンジの機嫌のいいときはレイも
うれしそうに飛び跳ねる。落ち込んでいるときは、心配そうにシンジの顔をの
ぞき込む。だからシンジはいつしかレイの前では努めて明るく振る舞うように
している。瓶の中から出られないレイに余分な心配をかけさせたくないのだっ
た。
「今日は動物のカードをやろうよ」シンジは引き出しから幼児用の単語カード
を取り出してレイに見せる。
「これがゾウ。見える?」シンジはレイの前にかわいいゾウの絵をかざし、は
っきりと口元が見えるように言う。「ゾ、ウ」
 レイは水の中で大きく口をあける。ぞ、う。と言っているように見えた。そ
うだ。もし人間になれたとき、これが役に立つんだ。シンジは彼なりに考えて
いた。
「次、いくよ。これは、キ・リ・ン」
 レイは同じように、き、り、んと言っているように見える。シンジはレイが
口を開けるのにあわせて、頭を上下した。

「変態」
 突然、背後から声がした。
 うわっ!…シンジはびっくりして飛び上がった。そして急いで振り返った。
 見たこともない女の子が、両足を広げてすっくと立っていた。上から下まで
真っ黒いワンピースを着て、長い亜麻色の髪を大きな、真っ赤なリボンで止め
ている。その女の子は、青い大きな目を見開いて、彼を指さす。
「この、変態!」
 シンジは、自分が幻覚でも見ているのかと思った。同級生にもこんな女の子
はいないし、だいいち、自分の部屋にまで訊ねてくるような女の子の友達なん
か、いるはずがないと思ったからだ。
 それにその子はまるでマンガみたいな格好をしていて、嘘みたいに可愛い美
少女なのだ。こんなことがあるわけがない!
「なんとかいいなさいよ、この変態」女の子は怒った声でくりかえす。
「き、君はだれ?」それしか浮かばなかった。
「それを訊きたいのはこっちのほうよ!…ここ『碇ユイ』さんの家よね!」
「う、うん」
「じゃ、あんただれ?」女の子は言った。その言葉がまるで当たり前のようだ
ったので、シンジは自分のほうが、勝手に人の家に入り込んでいるような錯覚
を覚えた。
「ぼ、ぼくは碇シンジ、碇ユイの息子だよ」…たぶん、とシンジは思った。
「む、むすこぉ!!!!息子っていったわね!」
「…そうだよ」碇ユイの息子でいるのは、何か大変な間違いなんじゃないだろ
うか?シンジは不安になってきた。

 いっぽう、瓶の中のレイは立ち上がったシンジの陰になって、何も見えない
ので不安になっている。聞いたことのない甲高い声がする。レイは瓶の内側を
拳で叩いてみる。しかし、15センチの身長しかレイが、シンジが聞こえるほ
どの音が出せるはずもない。

「息子がいるなんて聞いてなかったわよ、わたし!…どうしてくれるのよぉ!
…男の子がいる家に4年も住まなきゃならないなんて!」
「い、いまなんて言ったの?」
「まずい。じつにまずいわ。…なんてことかしら!…こんなことになるなら、
アメリカのマダム・ミランダのところにすればよかった!…もうだめよね」女
の子はシンジを無視して彼の勉強部屋の中を歩き回り始めた。レイはそのおか
げでようやくこの侵入者を見ることが出来た。女の子?わたしと同じ、そして
わたしより大きい普通の女の子?レイは不安でいっぱいになっていた。
「そうだ!…あんた、4年間家出しなさい!…うん、それがいいわ」
 さすがのシンジも徐々に腹が立ってきた。
「なんで、初対面の君に出て行けなんて言われなきゃならないんだよ!それに
4年間住むって」
「…あんた、聞いてないの?」
「なにを?」
「だから、あたしが今日来るってことをよ、ばか」
「聞いてないよ」
「あのね。魔女は14歳になったら一人立ちに備えて、18になるまで出来る
だけ遠くの町でくらさなきゃならないの!そして18になったら、素質のある
ものは魔法アカデミーに進級するのよ。…でもあたし、もう飛び級制度で卒業
しちゃったから、順序が逆になったけどね」と言って、女の子は胸をはった。
 どうやら自慢しているらしい。
「そういえば、人を迎えに成田空港に出かけたなあ」
「何時ごろ?」
「3時ごろかなあ」
「3時?…まずい。まずいわ。7時の便だと思ってるのね。ああ、わたしとし
たことが連絡し忘れるなんて!」女の子は途方に暮れたようにふたたび部屋を
歩き回る。そして時折シンジを値踏みするような視線でしげしげと見ながら、
はあああ、と溜息をつくのだった。
「…じゃ、とにかく、1階の居間で待っててくれよ、人の部屋のなかを歩き回
らないでくれよ」シンジは、その女の子を部屋から追い出そうと、その子の肩
にふれようとした。
 その時、毛糸の玉のようなものが、その子の背後から飛んできて、彼の手に
当たった。
いたっ!シンジは思わず手を引っ込めた。手に小さな鋭い爪でひっかかれた
ようなすじが三本出来ている。シンジはその毛糸の玉が飛んでいった方向を見
た。
 床に、まるまると太った猿がいて、歯をむき出して彼を威嚇しているのだっ
た。よく見ると、頬に大きな古い傷跡がある。
「でかしたわ、モン吉」少女は言った。

「ごめんなさい、隠してるつもりはなかったのよ、アスカ」ユイは、ご飯をよ
そって、正面に座っている少女に渡した。
 夜になって、風はますます強くなっていた。台風は接近中。碇家では家族そ
ろって夕食をとっている。ゲンドウはむっつりと黙り込んで、皿の中の大嫌い
なほうれん草をよけている。シンジはアスカという少女の隣に座っている。手
の甲に張ったバンドエイドを見ながら、自分の家が急に居心地が悪くなったと
感じていた。
 『シゲル君』はアスカの『使い魔』である小型の猿のモン吉とともに、床に
置かれたミカン箱をテーブルにして、ぶっかけめしを食べていた。

 レイは、薄暗いシンジの部屋の中に置かれた瓶の中の底のほうでくるくるま
わりながら、あの女の子はシンジとほんとうのキスができるのだ、と思った。
そしてその光景を想像してみた。胸がきりきりと痛んだ。…こんな苦しくて、
つらいのに、なぜ、私に命を与えてくれたの?レイは、自分を造りたもうた、
色眼鏡の創造主に祈った。

「かあさん、醤油とってくれ」「子供部屋が二つあってよかったわ」「でもお
ばさま、向かいなんでしょ」「ええ、そうだけど」「…」「ぼくの事ならご心
配なく!」「シンジ!そんな言い方しないの」「そーねぇ、あなたにはあの子
がいるもんね」「アスカちゃん」「かあさん、ソースとってくれ」「ウキキ」
「おばさま、モン吉がおかわりですって」「使い魔に猿なんてめずらしいわね」
「そう?」「かあさん、ケチャップとってくれ」「あなた、さっきから何を作
ってらっしゃるの?」

 案の定、その夜シンジは目がさえて眠れなかった。レイはそんな彼を見つめ
ていた。

つづく

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